実銃
1950年、朝鮮戦争に派遣された在日アメリカ軍4個師団に代わる国内の治安維持部隊として、警察予備隊が創設された。この時、警察予備隊にはアメリカ軍より主力火器である小銃を含めた装備品の貸与・供与が行われた。しかし、この時供与されたM1小銃(M1ガーランド)やM1騎銃(M1カービン)、M1903A4は第2次世界大戦で酷使された中古品で、老朽化が激しかった。
その後隊員増加に伴い旧日本軍の九九式短小銃をも使うことになるが、大戦末期に製造された粗悪な戦時急造型が多い上、本来使用する7.7mm弾より強力な30-06弾用に改造された危険なものだった(しかし30-06弾の弾頭は7.7mm弾の弾頭より径が小さいため、ライフリング効果が少なく弾道が不安定だった)。52年に警察予備隊は保安隊へ、さらに54年に自衛隊へ改称した後もそれらの火器を使用し続けたが、老朽化などに伴い射撃すらままならないという事態に陥った。加えて、アメリカ軍が小銃弾を30-06(7.62×63mm)弾から.308ウインチェスター(7.62mm×51)弾へ変更、これをNATO標準弾としたこともあり、1957年には防衛庁技術研究本部が新小銃の研究を開始。同年11月には、豊和工業株式会社(以下豊和工業)が独自に行っていた新小銃の開発の結果R1およびR2という2種類の試作品を完成させた。その後1959年4月に完成したM14に似た外見を持つR3を経て、1960年11月にはR6Aを、翌61年7月にはR6B1を開発した。この頃、当時アメリカ軍が採用していたM14を自衛隊が5万挺取得するという計画が持ち上がるが、61年9月に豊和工業は防衛庁から7万挺の試作発注を受け、R6B1を改良した官T型(速度遅延装置が豊和製)および官U型(速度遅延装置が防衛庁技研本部製)を納入した。これらはM14より高性能として国産小銃の開発が決定され、官U型は2回の改良の末、1964年9月7日付で制式採用許可が出され、同年10月6日「64式7.62mm小銃」と命名された。
こうして誕生した戦後初の国産小銃であったが、採用の前々年(1963年)2月に当時ヴェトナム戦争に介入していたアメリカ空軍が.223レミントン(5.56mm×45)口径のコルトAR15を採用したのを皮切りにアメリカ軍制式ライフルは小口径化が進み、弾薬の互換性は失われた。さらに70年代、7.62mmNATO弾は反動が強く連射に向かない(そのため64式小銃は連射速度を落とし、装薬量を10%減らした減装弾を使う)こと、小口径弾は有効射程が短いものの携行弾数が増加できることなどから、諸外国で小銃の小口径化が進んだ。自衛隊でも1968〜96年にかけて、豊和工業がライセンス生産し輸出していた5.56mm口径のアーマライトAR18とその民間用AR180を、富士学校と第1空挺団に15挺試験配備し技術研究とテストを行っている。
豊和工業では1966年頃から小口径小銃の開発をはじめ、75年にはAR18にバースト機構を含む改造を加えたAR18改試作ライフルを防衛庁第一技術本部に納入した。これを受け1978年には新型ライフルを設計することとなったが、AR18ベースは技術的発展性に問題があり断念、新設計で試作のHR10(豊和ライフル10型。64式小銃の試作機の数字が1桁であるのに対し、こちらが2桁であるのは、豊和工業が試作する第2世代のライフルであるため)を完成させた。このHR10は現在の89式小銃とほぼ同じ大きさ・重量で、セミ・フル・3点バーストを搭載し、口径は.223レミントン(アメリカ軍採用名M193)弾であった。64式小銃はレシーバーをスチール削り出しで製作、ストック・グリップ・ハンドガードが木製であったのに対し、HR10は上下レシーバーを原材料シートメタル、プレス加工で製作し、ストック・グリップ・ハンドガードをプラスティック製とした。
このHR10の技術研究とテストを踏まえ、軽量化モデルとしてHR11を1979年に開発。ボルトキャリアーとフォールティング(折りたたみ)ストックにアルミ軽合金を使用、マガジンハウジングに軽量化とマガジン残弾の確認孔を兼ねた穴を開け、HR10(マガジンを除く重量3.5kg)より600g減量(マガジン除く)した。
このHR10およびHR11の結果と技術本部第一研究所での研究を反映させ、防衛庁技研本部で技術テストを行うための技本研究試作銃(研試銃)が1981年に設計された。HR10に準じる固定ストックの標準型とHR11に準じるフォールティングストックの軽量型が製作された研試銃は、HR10およびHR11の部品強度や耐久性を高めたため、全体重量が100〜200g増加した。この研試銃は1982〜83年にかけてテストと改良が繰り返される。
同時期、アメリカはM193をNATO標準弾として採用しようとするが、M193よりも重弾頭で高威力のファブリックナショナル(FN、ベルギー)社製SS109が優れているとされ、こちらがNATO第2標準弾となった。このため、新小銃の開発と並行し、このNATO第2標準弾に準じる新小銃用弾薬の開発も進められた。1984年、これら研究結果を受けて、新開発の高性能実包を使用弾薬とし、フォールティングストックを装備したHR12が製作、続いて豊和工業の社内研究用にヘビーバレルを装備したHR13が開発された。1986年にはHR13を除く全試作ライフルを発展させたHR15(HR14は数字の名が不吉として欠番。同じ理由で64式小銃の試作の際、R4が欠番となっている)が予備試作銃として、防衛庁に8挺納入されテストを受けた。
1987年、開発試作銃としてHR16が、固定ストック装備の“固定銃床式”とフォールティングストック装備の“折り曲げ銃床式”の2種類それぞれ19挺納入された。固定銃床式・折り曲げ銃床式ともに実用テスト(操作性・機能・命中精度・耐久性テスト)、寒冷地実用テスト、雨に対するテスト、砂塵に対するテスト、油脂残存に対する耐久性テストなどを行い、いずれも良好な結果となったため、1989年にHR16が「89式5.56mm小銃」として新制式採用小銃に制定された。89式小銃は1990年8月に第1回生産ロット56挺が完成し、初年度(1990年度)に1803挺、1991年度に2700挺、1992年度に4400挺が生産された。余談であるが、豊和工業では89式短小銃としてカービンモデルの試作を行ったが、自衛隊・海保・警察のいずれも制式採用とはしていない。
89式小銃はいくつかの点において、他国のアサルトライフルとは異なる設計意図が見受けられる。
まず特徴的なのは二脚(バイポッド)が標準装備されていることである。64式小銃にも同様に装備されているこの二脚は、陣地での防衛戦闘や連発時の命中精度向上を重視したためといわれている。64式小銃では分解しないと二脚が外れない構造であったが、89式小銃ではレバーによって容易に取り外すことが出来る。
また、切換レバー(セレクターレバー)が右側面についていることも、89式小銃の大きな特徴といえる。旧ソ連製のAKシリーズを除き、諸外国のアサルトライフルはグリップを握った右手親指で操作できるよう、セレクターが左側面についていることが多い。しかし自衛隊では、匍匐時に小銃の左側を地面に向けたり、担え銃(小銃を肩に乗せる状態)時に左側が肩に接したりするので、セレクターが左側面にあると不用意に切り替わる恐れがあるとして右側に切替レバーがついている。
その切換レバーは、ア(安全)⇔レ(連発)⇔3(3点制限点射=3点バースト)⇔タ(単発)の順番で切り替わり、アからタへは直接動かせず、安全位置から単発へ切り替わる多くのアサルトライフルとは異なっている。それぞれの位置へレバーを動かすには90°ほど動かさねばならず、その稼動距離が長すぎる(=安全状態から射撃可能にするまでに時間がかかり、その間射撃できない)という非難もある。2003年よりイラク特別措置法に基づきイラク・サマーワに派遣された部隊では、左側面にも切換レバーをつけるよう通達と部品が出されたが、帰国後は原状に戻すよう指示された。
なお、64式小銃も切換レバーが右側面にあったが、その切り替えにはレバーをつまんで引き出さなければならず、その操作は一層手間がかかるものであった。89式小銃には、銃床部(ストック)が固定式の固定銃床と、フォールティング(折りたたみ)式の折り曲げ銃床の2種類がある。両者は銃床部の他、引金室部(ロアレシーバー)の形状が異なる。
固定銃床では、銃床の左側面が大きく内側にえぐられており、射撃姿勢をとると顔が銃の中心により近くなるよう工夫されている。
折り曲げ銃床は銃床付け根のヒンジによって操作する。多くのアサルトライフルではフォールティングストックを銃の右側に折りたたむが、これはセレクターが左側面にあるためであり、切換レバーが右側面にある89式小銃では銃床が左側に折りたたまれる。固定銃床は普通科(旧軍でいう歩兵)部隊など一般的な職種(旧軍でいう兵科)に配備されるほか、海上保安庁の通常部隊でも使用されている。折り曲げ銃床は空挺部隊や機甲部隊など、銃の全長を短くする(917mmから670mmに短縮出来る)必要のある部隊に配備され、また海上保安庁の特殊警備隊(SST)や特別警備隊(特警隊)、あるいは日本警察の特殊部隊(SAT)などでの使用が確認されている(射撃時には動作不良を防止するため、89式装甲戦闘車の銃眼=ガンポートからの射撃を除き、銃床は伸ばす)。89式小銃(折り曲げ銃床、実銃) 撮影場所:2006年富士学校
89式小銃(固定銃床、実銃) 撮影場所:同上銃の各部品はプレス加工を多用し、製造コストの低下に役立っている。部品点数は約100点で、64式小銃から約10%の削減となり、メンテナンス性を向上させた。また、3点制限点射機構部をブロック化し、引金室体部(トリガーメカ)から切り離すことで、さらにメンテナンスを容易にしている。89式小銃はM16の弾倉(マガジン)が利用できるが、その作動方式はM16のガス直接利用方式ではなく、一般的なガスピストン方式である。
全体的に見て、諸外国のアサルトライフルとほぼ同等の性能を持ち、良くまとまった小銃であるが、その欠点は生産コストであるといわれている。1挺30万円前後もするこの89式小銃は、“世界一高価なアサルトライフル”とまでいわれる。これまでに約5万挺が生産されたが、ようやく陸上自衛隊の戦闘職種に配備が完了しつつあるのが現状である。未だに陸自の後方支援職種や航空自衛隊、海上自衛隊では64式小銃の使用が続いており、全自衛隊に89式小銃が行き渡るには採用から50年かかるという見通しさえある。
エアガン
この東京マルイ製電動ガン「89式5.56mm小銃(以下89式小銃)」は、2006年8月に発売された電動ガンであるが、これに先立つ同年3月ごろ、陸上自衛隊に対し「閉所戦闘訓練用教材」として600挺が納入された。これまで、隊員個人が自費で、あるいは部隊単位でCQB・CQC訓練用として電動ガンを購入して使用したり、実銃の構造を学ぶためモデルガンがごく少数自衛隊に納品されたことはあるが、本格的な装備品としてトイガンが採用されたのは初めてのことである。こうした訓練で使用されるには、実戦に忠実であることや過酷な訓練にも耐えられる強度が必要であり、この「89式小銃」はそれを満たす非常に優れた電動ガンである。
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化粧箱外観 化粧箱内部外見
前述の通り、この89式小銃は実際に自衛隊に採用され使用されることを想定して作られたため、そのリアルさや頑丈さは今までの電動ガンを大きく引き離している。
尾筒(アッパーフレーム)、引金室(ロアフレーム)ともにダイカスト製で、銃身(アウターバレル)にはアルミ合金製一体型を採用し、強度とリアルさを同時に獲得している。2006年の静岡ホビーショーでは、東京マルイのブースで89式小銃の銃身を持って振り回し、歪むどころかギシギシ音がしないというデモンストレーションを行っていたが、その剛性はとても心強い。
引金室左側。マガジンハウジングの薄さが判る。握把の左側にはフィンガーレストがある。尾筒左側面には「89式5.56mm小銃」および武器科を表す桜にWのマークと製造番号が打刻されている。「89式5.56mm小銃」の刻印は実銃の独特な字体を再現しているが、桜のマークは実銃とは若干違ったものである。また、実銃には製造番号のさらに銃床側に、豊和工業のマークが打刻されているが、これは省略されている。
引金室右側には、マルイ製品であることを表す一連の英文が打刻されているが、実銃では右側面に刻印はない。
刻印部分。尾筒上部にあるのは薬莢受けを装着する台座部(ベース)。
また、二脚も標準装備されている。レバーによって着脱が可能で、その可動部分にはローラーを用いるなど、実銃を忠実に再現している。二脚もダイカスト製で強度は十分で実際の使用に耐えられるほか、収納時には二脚先端の爪が被筒(ハンドガード)の放熱孔に収まることでバタつきを抑えている。ただし、二脚は銃身を挟んで使用するので、二脚に噛まれる部分の塗装が剥げてしまう。
二脚
銃身の二脚接合部分。塗装剥げが見える。銃床は左側面が実銃同様内側にえぐられ、銃の中心線により近い位置で照準できるようになっている。実銃では銃床内部は空洞であるが、この電動ガンでは予備バッテリーを収納することが可能で、床尾板(バットプレート)を引き出して回転させると収納口が開けられる。
上方から。銃床のえぐれが判る。照星(フロントサイト)、照門(リアサイト)ともに実銃同様に可動するようになっている。照星はM16のものとよく似たタイプで、付属するアジャストツールによって上下に調整が可能である。サイトガードにも補強リブなどが忠実に再現されている。一方、照門は左側のダイヤル(上下転輪=エレベーションダイヤル)で上下の調整、右側のダイヤル(左右転輪=ウィンテージダイヤル)で左右の調整を行う。実銃の特徴として、照門を上方向に最大位置まで上げると、その次の段階でサイトガード内に収納されるようになっているが、これもリアルに再現されている。しかしながら、照門に刻まれた左右調整用の目盛りには実銃では入っているホワイトが入っておらず、輪転には目盛りや数字が打刻されていないなど、外見的には若干見劣りする。
購入当初の照門。左から左側面・後方・右側面。ホワイトが入っていない。
ポスターカラーを使ってホワイトを入れた状態。写真の並びは上写真と同じ。被筒(ハンドガード)は、実銃ではスチールで、後ろ半分はプラ製の覆いがつけられているのだが、この89式小銃ではすべてプラ製である。握把(グリップ)左側にはフィンガーレストがある。握把自体はモーターが内蔵されている関係で、実銃より太い。
消炎制退器(フラッシュハイダー)はアルミ製で、14mm逆ネジの着脱式である。これを外してサイレンサーやフルオートトレーサーが取り付けられるが、消炎制退器が正しい向きでねじ込むことが出来ない製品もあるらしい。この場合、アウターバレルのねじ山をいくらか削ると改善する。また、消炎制退器の内側は実銃同様テーパー状になっているが、ブランクアダプター(空包使用時、銃身内の燃焼ガスに圧をかけガスピストンへ誘導するための器具)取付用のねじ山は再現されていない。
動作
この89式小銃で新しく搭載されたメカとして、メカニカル3バースト機構が挙げられる。今までの東京マルイ製電動ガンのうち、バースト(トリガーを1回引くと決まった弾数がだけ発射される)機能が搭載されたのは、SIG SG550およびSG551のみであるが、この両機種に搭載されたのは電子制御バースト機構であった。これは、電子回路により電流を適宜カットし、バーストを行うというものであった。これは2点バーストから8点バーストまで、発射できる弾数を変えられるという利点があったが、一方でバッテリーの状態により設定した弾数が発射されない、電圧が不安定になる、バッテリー消費が早い、コストが高くなるという問題もあった。一方、89式小銃では機械式の3バーストを搭載することにより、安定した3点制限点射(3点バースト)を行うことが出来た。この3点制限点射は実銃同様、3発発射される前にトリガーを離しても、次のバーストでは3発発射されるという精巧なものである。
89式小銃(および64式小銃)の特徴である右側面の切換レバーは、一般的な左側セレクターに慣れている者が使うと、最初は使いづらく感じるかもしれない。可動距離が大きいため、握把(グリップ)を握ったまま操作するには、ア⇔レ⇔3程度までは親指で、3⇔タは人差し指で行うのが良いだろう(あるいは、握把から手を離して操作すれば確実であるが)。購入当初はレバーの動きがかなり硬かったが(実銃はもっと硬いらしい)、繰り返し使用すれば動かしやすくなる。
また、左側面にはセレクター指標があり、現在のトリガーポジションが判るようになっている。「左面カスタムセレクタ(\850)」が別売りされており、この指標部分を交換すれば左側にも切換レバーをつけることが出来る(ただし可動距離は右側と変わらないので、握把を握ったまま右手親指でタまで操作するのは困難である)。
右側面。尾筒右後端上部にある複座ばね軸部爪(テイクダウンラッチ)も、機能はオミットされるものの、可動する。
蹴出口(エジェクションポート)後方にあるダストカバーは無可動ながら、別パーツ。弾倉(マガジン)はマガジンフォロアーが上部に飛び出す新型で、今まで銃のチャンバーに残って撃てなかった3〜4発のBB弾が撃てるようになっている。外観としては、実銃の弾倉に似せて、5発・10発・15発・20発・25発の部分に残弾確認用の穴が開いているが、ライフル弾を模した真鍮製のダミーカートが内部につけられており、実際の残弾確認の機能はない。また、これは実銃の設計がそうであるのだが、マガジンハウジングがタイトであるため、弾倉を真下から垂直に挿入しないと正しくセットされない。弾倉止めボタン(マガジンキャッチ)も若干硬すぎるような気がする。
この89式小銃は実銃と同様、電動ガンM16シリーズ用のマガジンも流用することが出来るが、この場合銃のマガジンハウジングに開いた穴から隙間が見え、また残弾撃ちつくしの機能はなくなる。89式小銃用の弾倉はM16シリーズには使用できない。89式小銃用弾倉
M16用マガジン(左)と比較。上部の構造が違う。
M16用マガジンを装填。隙間はあるが給弾出来、グラつきもない。
引金(トリガー)の引き心地は、今までの電動ガンが電気的なスイッチであることが如実に伝わる感触であったのに対し、89式小銃は前作のM14と同様、しっかりとしたクリック感があり、電動ガンっぽくない。最初の数mmはほとんど抵抗感がないが、その後若干重くなり、最後にカチッと切れる感触がある。実銃でも、引き始めは軽く、その後重くなるそうである。ちなみに隊員は、最初は一気に、その後はゆっくり引金を引く(これを『闇夜に霜の降る如し』と呼ぶ)ようにと教わるらしい。
実際に射撃姿勢を取ってみると、銃床のえぐれや握把のフィンガーレストなどのおかげで、とても安定した姿勢になる。日本人の体格を考慮した実銃の設計が良く判る。ただし、二脚をつけない方が前後バランスは良いかもしれない。二脚をつけ、バッテリーを被筒内部に入れると、若干フロントヘビーな気がする(その場合、銃床内に予備バッテリーを収納すればバランスが良くなるかもしれない)。
射撃性能は申し分ない。照門と照星をしっかり調整し、ホップアップも適正にすれば(ホップアップ調整ダイヤルは蹴出口内)、十分な命中精度が得られる。
総評
この電動ガン「89式5.56mm小銃<固定銃床式>」は、非常に満足のいく電動ガンである。見た目・性能ともに申し分なく、陸上自衛隊が実際に訓練で使用することを前提で作られたということを考え合わせれば、これ以上良く出来たトイガンは他にないといっても過言ではない。体へのフィット感などは他の追従を許さず、射撃性能も優れている。金属パーツが多いため同サイズの電動ガンと比べて若干重い(もちろん、これは個人差である)のが難点であろうか。
89式小銃はその採用から17年間、ガレージキット以外でトイガン化されることがなかった。そのため、ファンの間では“89式小銃をトイガン化しようとしたメーカーには、防衛庁からトイガン化を中止するよう圧力がかかる”というまことしやかな噂まで流れた。その真偽は別(数の上では主力小銃である64式小銃や、9mm拳銃はトイガン化されていることから、この噂に明確な証拠があるわけではない)としても、自衛隊装備に興味を持つものが必ずといっていいほどそのトイガン化を心待ちにしていたのは事実であり、長年待ち望んだこの89式小銃は、“待った甲斐があった”仕上がりである。
日本国憲法において「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚(日本国憲法前文)」し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した(同)」とされる日本国民は同時に、「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務(同)」の具体的な手段のひとつである正当防衛権の発動としての戦争と、国防力としての軍事力を、同じ日本国憲法によって制限されている。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持(日本国憲法第9条第2項)」せず、一切の「国の交戦権は、これを認め(同)」られないまま、“恒久の平和”と“われらの安全と生存”の保持のために創立された自衛隊。創立以来その矛盾に苦しみながら、如何なる人間に対しても銃口を向けなかった自衛隊が装備し、国防の最前線に立ち続けるこの89式小銃という火器がいかに美しいものであるか、この電動ガンはそれを感じさせてくれる。
実銃 エアガン 名称 89式5.56mm小銃 89式5.56mm小銃
<固定銃床式>開発国/生産国
(メーカー名)日本
(豊和工業株式会社)日本
(東京マルイ)全長 916mm
(917mm、920mmとする資料あり)916mm 銃身長 420mm 433mm 重量 3500g
(弾倉を除く)3700g
(バイポッド、マガジン、バッテリー含む)口径 5.56mm普通弾 6mmBB 装弾数 30/20 69/420