陸上自衛隊 東部方面隊 第12旅団 松本駐屯地

創立54周年記念 自衛隊祭り
その3

 

 その後、装備品展示を見に行った。昨年は雨が降っており、雫が滴ったとても幻想的な雰囲気であったが、今年はまさに快晴。スチールの輝きが一層増して見えた。

 

 昨年までは展示品に触ることは出来なかった。例え未装填であっても、“殺人道具”である以上当然だろう、そう思って理解していた。ところが、今年は銃器や個人携帯砲などの小火器に限って、触ることが許されたのである。これは有り難いことだと早速近づいていった。

 


サイドから見るとスマートだが、厚みは結構大きい

サイトビュー

 まず一番近くにあった5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ)からである。サイドから見ると機関銃とは思えぬほどスマートだが、ストックに肩当てするとやはり機関部から銃口にかけて厚みがあるのが判る。さすがにこれだけ重量感があるものを持ち上げてみようと云う気にはなれなかった。来年への課題か。

 

小柄な外見。だが持ち上げると電動ガンに慣れた腕には重く感じる。

エジェクションポート内

 続いて89式小銃。プラスティックを多用しており、重量3.5kgと非常に軽量。その重さと手触りは電動ガンと似ているとも云える。だが、ホールドオープンされた排莢口からは、複雑な機関部が見え、実銃の重々しさを見せつけていた。しっかりと構えてみたわけではないが、とてもスマートで、日本人には扱いやすそうであった。特に、M16などは固定ストックがやたらと厚く感じるのに対し、89式は頬があたる部分が大きく抉られ、フィット感も上々である。

 

 各展示品の中でも一番人だかりが出来ていたのが、9mm機関拳銃と9mm拳銃であった。
 9mm機関拳銃は、空中展開部隊である第12旅団の隷下にあり、山岳レンジャーを育成する第13普通科連隊にとっては、軽量コンパクトな銃器として必需品であり、採用間もない頃から配備が始まった。
 しかし、実際持ってみると、かなり厚みがあり、嵩張りそうである。実際、背嚢を背負っていると背中に廻したときに邪魔になるという意見もあるそうである。正直なところ、H&K MP5 KA4“クルツ”の方がコンパクトで扱いやすそうである。

 一方、9mm拳銃は世界中の軍・警察で愛用されているSIG SAUREのP220をライセンス生産しているものであり、非常に良く手になじんだ。無論重量はあるが、扱いやすい印象はある。
 この9mm拳銃は、ハンマー(撃鉄)を起こし、ドライファイア(空撃ち)が出来たのだが、撃鉄がかなり固く、グリップした右手の親指だけでは起こせなかった。SIGの拳銃はトリガープル(引き金を引くのに要する重さ)が大きいと聞いていたが、これほどまでとは思わなかった。
 ちなみに、SIGの拳銃は錆に弱いそうで、新品を撃った後手入れをしないと翌日には手形に錆が浮いた、等という話もある。9mm拳銃も錆に弱いかどうか判らないが、もし弱いならこんな大人数がべたべた触ってしまい、後の手入れの苦労が忍ばれる。

 この2挺は、あまりに人が多すぎて写真が撮れなかった。残念である。

 

少年と比べると大きさが判る

(左)内部構造 (右)サイトビュー

 1933年に米軍に採用されて以来、過去の名だたる戦争で常に使用されてきたブローニングM2重機関銃。さすがに3脚に据えられたその大きさには圧倒された。幸運にも、私の隣で見ていた初老の男性が、隊員に対して“これはベルト給弾なのか”などと質問し、隊員がフィードカバーを開けて内部を見せていたので、その撮影も出来た。M2の引き金はボタン式だが、これは9mm拳銃とはうってかわりとても軽かった。

 

見た目以上に重いカール・グスタフ

 84mm無反動砲“カール・グスタフ”。スウェーデン製だが世界中で使用されている。さすがにこれらの携帯砲は肩に担うわけにはいかず、照準機を覗く程度だった。頬があたる部分にはパットが貼られていたが、やはりあまり柔らかいものではない。

 

カール・グスタフよりモダンな印象

 110mm個人携帯用対戦車弾“パンツァーファウスト3”。大元はドイツ製。カール・グスタフの後継だが、こちらは照準機以外は使い捨てである。照準機には距離測定目盛りが内蔵されていた。

 

 このほか、81mm迫撃砲から96式誘導対戦車弾などなど、重火器が展示されていたが、これらの周囲にはロープが張られ、触れることは出来なかった。

 

 数年前までは64式小銃が、昨年までは74式車載機関銃なども展示されていたが、それぞれ89式小銃とMINIMIに更新されたのだろう、とうとう今回はそれらも見られなくなった。その一方、今回は個人用無線機なども手に取ることが出来た。なぜ今年から銃器を手に取ることが出来るようになったのか、それは判らないが、装備品と共に、自衛隊の意識もまた変わっていくのかもしれない。

 

 自衛隊関係の行事があると、必ずと言っていいほど出没するのが右翼・左翼団体である。今回もまたご多分に漏れず、元気に活動していた。
 右翼的、左翼的というのはあくまでも主観論だし、個人がどんな意見を持ち公表しようが、それは憲法の保証する思想の自由・表現の自由である。しかし、日本の右翼・左翼は本質とは大きくずれているのが実状であることをご存じだろうか。

 ある方がこう仰有ったことがある。“日本の右翼・左翼は極右・極左だ”。まさに日本の右翼・左翼を適切に表した言葉だと思う。日本の右翼は極端なまでに軍国主義的であり、日本の左翼は悲しいまでに非現実的である。
 例えば、国連憲章第7章第42条には、「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる」と記されている。これは第41条に定める非軍事的措置では不充分な場合、という前置きがあるが、いずれにせよ国連は、平和を守るためであれば、最悪軍事的措置を行うことも許しているのである。しかし、日本の左翼が”自衛隊は憲法違反だ”と叫ぶことはあっても、“国連から脱退しろ”ということはない。
 諸外国は右翼・左翼の差はあれ、彼らの基本理念は“国を守ること”“平和を維持すること”である。しかし今の日本では、“平和っぽいこと”を云えばそれが正しいという風潮があるように思えてならない。本来ならば“タカだろうがハトだろうがアホウドリだろうが、正しいことを云う者が正しい”なずなのに。

 

 いずれにせよ私は、このように市民・国民一般と自衛隊の距離を縮めることは良いことだと思っている。自衛隊にとって国民は唯一のスポンサーである。無論国防上明かせない部分もあることは確かだが、公表できる部分は公表し、ふれあえる機会はより多く持つべきだろう。だからこそ私は毎年ここを訪ねるし、今年も訪ねた。来年もまた、きっとここに来ることだろう。


「守りたい人がいる」

 

 

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