9mm拳銃


実銃

 朝鮮戦争において在日アメリカ軍4個師団が朝鮮半島に派遣された為、国内の治安維持のために警察予備隊が創設されたのが1950年である。その時の警察予備隊の装備はすべてアメリカ軍より貸与・供与されたものであった。54年に自衛隊へ改称した後もそれらの火器を使用し続けたが、老朽化や兵器の国産化の要請により60年代には多くの火器が更新された。

 拳銃に関しても、アメリカ軍から供与されたコルトM1911およびM1911A1(コルト ガバメント)を11.4mm拳銃として採用していた自衛隊だが、この11.4mm拳銃はあまりにも大きく、また45ACPという使用弾薬も反動が強すぎるとの意見があった。そのため、1957年には新中央工業(後のミネベア株式会社)によって戦後初の国産自動拳銃ニューナンブM57Aが試作された。外観はほぼガバメントを躊躇したものだったが、グリップ・セーフティを廃した代わりにマガジン・セーフティを搭載し、口径は9×19mmに変更されていた。しかしながら、当時はアメリカ軍も依然としてガバメントを使用しており、また政治的判断もあり、時期尚早として採用は見送られた。

 しかしながら、ガバメントに対する不評は依然として根強く、またガバメント自体の老朽化から、1979年から新拳銃を採用すべくトライアルが開始された。SIG SAUERのP220、FN(ファブリック・ナショナル)のHP(ブローニング・ハイパワー)、新中央工業のニューナンブM57A1などの中から、1982年まで続いたトライアルによって採用されたのがP220であった。西側諸国で一般的な9mm×19口径、シングルカアラムマガジン(単列弾倉)によりグリップは細く日本人にも握りやすく、マガジンキャッチがコンティネンタルタイプと呼ばれるグリップ底部にあるタイプであるため携行中にマガジンを落としにくい、などの理由から採用されたと考えられる。同年1月には防衛庁長官により部隊使用承認を受け、採用名は9mm拳銃として部隊配備が始まった。

 生産はSIG SAUERよりライセンスを受けた新中央工業(現・ミネベア株式会社大森製作所)が行っている。形状はP220の後期型とほぼ同型だが、オリジナルとはトリガー及びハンマーが若干異なり、スライド左側には『NMB SHIN CHUO LICENCE SIG-SAUER』、右側には国有財産を示す桜にWのマークと『9mm拳銃』及び生産ロット番号が打刻されている。

 陸上自衛隊では本来は、小銃を携行しない指揮官や無反動砲手、車両搭乗員の自衛用火器として採用されたものであるが、近年では市街地戦闘における拳銃の有用性から、小銃を携行する普通科(諸外国の軍でいう歩兵)隊員が使用する場面も見られる。


右側面に打刻されたマーク。武器科の所有であることを示す。


ミネベアがSIG SAUERよりライセンスをうけ生産している旨が記された左側面


エアガン

 タナカが2003年にRマガジン仕様としてリニューアルした9mm拳銃である。マガジン以外のパーツはリニューアル前のものを流用しているが、今回は今までの陸上自衛隊モデル(桜Wマーク)の他に空自モデル(桜Wの両サイドに3枚羽ウィングマーク)、海自モデル(桜Wのバックに錨)が発売される。

 

外見

 タナカというメーカーが本来モデルガンメーカーであるためか、実銃の雰囲気はとても良く再現されている。自衛隊施設の一般開放で見る実銃と比較してみても、大きく見劣りする点はなく、このモデルを実際に手に取った元自衛官の方もかなり感心されていた(ただし、本物はもっと仕上げが荒いそうである)。スライドストップやデコッキングレバーなどの可動パーツも変なたわみもなく動く。ただし、ハーフコック・ポジションは再現されていないので、デコッキングレバーを操作するとハンマーは完全にダウンしてしまう。チャンバーとスライド上部も実銃同様ツライチ(フラット)である。グリップのシボ加工は、このエアガンでは凸部分がグリップパネル面から飛び出しているのに対し、実銃は凸部分とパネル面の高さが同じであるらしい。また、ファイアリングピンは再現されていないので、ハンマーコック時のリアビューは些か寂しい。

 グリップは実銃がシングルカアラムということもあって細身である。ただ実銃の設計が45口径まで対応できるようにした結果、9mm口径としては太い。親指の置き場がないという意見も聞くと、結構使う人間を選ぶかもしれない。私は指が長い方なのであまり気にならないが、手の小さい人は中途半端なグリップ感に困るかもしれない。マガジンキャッチはヨーロピアンタイプと呼ばれるグリップ下部に付いたもの。マグチェンジがしにくく、マガジンの出し入れにも引っかかってスムーズにいかない。サイトはフロント・リアともに固定。かなり小さくて、狙って当てるには難しい。総合すれば、実戦的な銃ではない。

外側からは見えないチャンバー左側にも打刻がある。これはP220コマーシャルにはない。

 実銃では素材が違うスライドとフレームをプラスティックの色を変えることで表現したり、分解しないと見えないチャンバーにも実銃と同じように打刻されていたりと、リアリティという面においてはかなりの努力が見られる出来となっている。グリップの凹凸など、実銃とは違う部分もいくつかあるが、雰囲気は悪くない。何よりもまず、日本語の刻印が珍しさと懐かしさを併せ持った独特の印象をもたらす。

 ただ、マガジンを抜くと驚くほど軽い。マルイのエアーコッキングと変わらない程度しかない。実物を持ち上げたときに、その重さに驚いた記憶があるが、これだけリアルを追求しているエアガンなのに残念ではある。その他の基本的に内容は同社のSIG SAUER P220とほぼ同一である。

 

動作


新型Rマガジン(左)と旧型マガジン(右)。バルブが大きく改修された。

 Rマガジンの性能は以前のものより向上し、ガス漏れが頻発することはまずないが、やはりマガジンの性能は他社の製品に大きく水をあけられている。室温20度での試射では、KSCのグロック18Cは問題なく作動したのに対し、9mm拳銃は僅か3連射でガスが抜けた。25度の野外では12発全弾発射は出来たが、元々シングルカアラムのマガジンであり、容積が少ないのが原因だろう、冷えやすいためスライドストップがかからない。本格的な夏であれば十分な性能を見せるが、連射には多分に不安が残る。なお、リニューアル以前のマガジンも使用は可能である。

 装弾数が12発と非常に少なくサバゲでのメインウェポンとするには少々抵抗があるが、精度も悪くはない。だが、前述の通りフロント・リアサイトが小さく固定式なので、精密射撃に対応できるものではない。ホップアップの調整はP220と同様にスライドを外さなければ出来ず、面倒臭い。少なくとも、ゲーム中に変えられるものではない。

 実銃のSIGのハンドガンは特にダブルアクション時にハンマープルが重いことで有名である。私も9mm拳銃をドライファイア(空撃ち)したことがあるが、ハンマーが片手では起きあがらなかった。このエアガンもダブルアクションでは若干重い気がする。恐らく、トリガーの位置が大抵のハンドガンより微妙に遠いためであろう。指の短い人には引きづらいトリガーかもしれない。シングルアクション時はそれほど重さは感じず、ガク引きすることもなくスムーズに落ちる。

 ブローバックに関しては、ウエスタンアームズからライセンスを受けたマグナブローバックを搭載している。ブローバックの動作自体は(気温が高ければ)しっかりとしていて強みがあるが、手に伝わるショックはウエスタンアームズのものほど強いものでもないというのが実感である。スライドの重量があまりないのが原因だろう。

 暫く使っていたところ、スライドの閉鎖不良が頻発するようになった。どうやらスライド側に問題があるようなので、取説に載せられた分解とメンテナンスの項目通りブリーチとローディング・ノズルを取り出して注油してみた。タナカの製品はオイルを差しすぎる傾向があるようで、この9mm拳銃もティッシュで拭ってみるとべっとりとオイルが付いた。綺麗にオイルを拭き取った後、再び注油して動かしたところ作動不良は無くなったので、もし動きに問題がある場合は一度メンテナンスをお勧めする。

 

総評

 実戦で使用するには装弾数の点や、マガジンキャッチの構造などはやや不都合であろうが、撃てないからといってこの銃の魅力がまったく無くなるわけではない。自衛隊が使っている、という点でこの銃のステータスは他の銃を凌駕する。是非とも9mm拳銃が欲しいというのであれば購入すべきだろう。ただし、実戦能力は期待出来るものではない。

  実銃 エアガン
名称 9mm拳銃 9mm拳銃
開発国/生産国
(メーカー名)
スイス/ドイツ
(SIG/SAUER)
ライセンス生産:日本
(ミネベア株式会社)
日本
(タナカワークス)
全長 206mm 208mm
銃身長 112mm 88.5mm
重量 830g 560g
口径 9×19mm 6mmBB
装弾数 9+1 12

 

 

 

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